普通の人間の恋


でも私は彼が好きだった。彼しか愛せなかった。
好きなものが1つでもあれば生き生きした顔も見れる。
そう思い、数年後に私と彼は結婚した。
式は挙げていない。なぜなら金が無かったから。

けどお金が無くても、神様は私たちに新しい命をくれた。
この子のためだったら彼は少しでも金遣いの荒さを抑えてくれるだろう。
そう勝手に思っていた。


「・・・借金・・?」

「ごめんね・・銀行からも借りてて・・・」


貯金が全く無いことも知っていた。
だって彼は全額をギャンブルに費やすから。


「前は80って言ってたよね・・いくら?」

「・・・怒らない?」

「金額によるよね」


彼はすごくタジタジしていて、落ち着きが全くなかった。
それに、息遣いも荒くなっていった。


「・・・は、はぁっ、はぁ・・んっ・・せっ・・1100・・」

「・・・は?」

「違うんだ、倍にして返そうと思ったんだ!そっちのほうが幸せじゃん!?なのに・・・たまに当たってもそのお金をまた使っちゃうんだ・・」


1100万という大きな壁にただボー然とする。
彼が話しても何も耳に入らない。

彼だけが、

彼の趣味だけで作ってしまった借金。

まだ、まだ100万円ぐらいなら返せた。
でも三桁ではない。四桁なのだ。



もうダメ。この人とはやっていけない。


「離婚しましょう・・」

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