普通の人間の恋


「え・・・」

「金額が大きすぎる・・!もっと、もっと少ないのかと・・!私は・・・私は昔からずっとお金を払ってたのに・・!それなのに・・お金返しなさいよ!!私の・・昔の幸せも・・・一緒に返しなさいよ!!」

「俺はまだ皐月ちゃんを愛してるよ!?それなのに離婚は嫌だよ!」

「そういう話をしてるんじゃないの!」


夜中だった。自分の声が脳内で響く。


「ママぁ・・?どうしたの・・?」


子供が目を擦りながら起きてきた。

まだ3才で、これからのこの子の未来はどうなるのだろうか。
そう考えただけでも光が見えない気がした。

毎日頭の中でお金のことを考えるのは嫌だった。


「ん、何もないよ・・良い子だから。ママももう少ししたらあっちで一緒に寝るから・・」

「うん、わかったあ」


子供はトテトテと私と彼の寝室へ向かった。


「あの子は私が育てるから・・・もう顔も見たくない・・」

「ごめんね・・・ごめんね・・。」


二度目の涙から何回見ただろうか。
同棲して知った競馬好きの趣味。

ギャンブルで負けて、号泣する姿、吐く姿。

でももうこれからはこの涙を見なくて済む。
そう考えると何だか少し、心に渦ができた。

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