ファジー。
その日、私は帰宅しようとして、机の中にスマホを置きっぱなしだったということに気付いた。
一旦出た校内に戻り、教室に入ってスマホをとる。
教室には誰もいない。
スマホをカバンに入れて教室を出ようとすると、
突然手をかけようとしたドアが開いた。
「わっ、あ…高、瀬」
「え、理子、もう帰ったんじゃないの?」
廊下側にいたのは高瀬だった。
スマホ忘れたから、と言うと、「俺は補習。英語の小テストが悪くて」と返事が返ってきた。
「…………考えてくれた?」
小さく、心臓が、跳ねた。
考えてくれた?って
告白のことしかない。
「あー…、別にまだなら言わねぇでもいいから」
返事なんて決まってる。
私も好きだったと、ただ一言伝えるだけでいい。
なのに、
「…ま、まだ。
もうちょっと待って」
どうして私は、はぐらかしたのだろう。
『心の整理がついてない』なんて、自分で自分に言い訳をした。
高瀬はそんな私の言葉にも、分かったって頷いただけだった。
次も、その次も。
伝えるチャンスはあったのに
私はその度に、言葉をぼかすだけだった。
高瀬に、甘えていたんだ。
高瀬はずっと待っていてくれるって。