ファジー。
―それが、高校一年の夏休み直後のこと。
1年前の、9月中旬だった。
「え…?」
聞き間違いだと思った。
聞き間違いであって欲しかった。
『言ってなかったっけ?
俺、彼女できたんだ』
それが、今、耳に入った言葉。
「だからー、彼女できたって言ってんの!」
リア充の仲間入りだー、なんてことを嬉しそうに言う高瀬。
今日は丁度、去年高瀬に告白されたのと同じ時期だ。
高瀬の中で、私を好きだったことは
もうとっくに思い出になってるんだ。
地面がぐらぐらと揺れてるように錯覚して、危うくバランスを崩しそうになる。
ごちゃごちゃの頭の中で考えて絞り出したのは、私の気持ちと真逆のことだった。
「良かったじゃん!
せいぜい彼女さんとイチャイチャしてろバーカっ」
私は今、笑えてる?
あのとき返事をしなかったのは私。
本音を伝えなかったのは私。
素直にならなかったのは私。
後悔しても遅い。
高瀬の目には、違う女の子が映っている。