ファジー。
まだ大きく音をたてる胸を精一杯おさめて
プリントをまとめることだけに集中する。
高瀬はうつむいて作業していて、顔は見えない。
ただ、耳が少し赤くなっている気がした。
ねえ、高瀬は何を思ってるの?
さっき手ぇ繋いだ理由を、教えてよ。
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目の前には、きれいにホチキスが留まったプリントの束。
「意外に早く終わったね…」
「な、集中したらあっとゆー間だったな
多分、俺の作業スピードが早かったんだな」
「あんたはいつも一言余計。
これ職員室に持ってけばいいの?」
机の上に積まれた紙を指差して言う。
もうちょっと2人でいたいかなぁ、なんて。
やばい。私、恋する乙女になってる。自分がきもい。
「んーん、どうせクラスで配るやつだから
教室に置いとけって言ってた」
「そ?じゃあいっか
帰ろー!」
「おう」
階段を下りて靴箱へ向かった。
私の数歩後ろに高瀬が歩いている。
…いや、待て待て。
流れで一緒に帰ることになってない?
何気に一緒に帰ることなんて初めてだから緊張する。
普通を装って、他愛ない話をしながら学校を出た。
数分歩いたところで、高瀬が立ち止まった。