私の好きを受け取って。

私の優しい一言で翔平がニコリと笑って口を開く。

『実は、彼女が出来たんだ。』

思いがけない翔平のその言葉にお通しに伸ばしていた箸が止まった。

いつもうんざりするぐらい毎日顔を合わせるたびに私に「好き」って言い続けてきた翔平に?彼女?

『彼女?へー、よかったね。どんな子なの?』

止まっていたことに気付かれないように、自然に、ゆっくりと箸を動かし始めた。

『うーん…、年下で、かわいい感じ?梨恵とは正反対って感じかな~。』


『へー、正反対かぁ。』

正反対って言葉に傷付いていることが気付かれませんように、声が震えませんように、そう気を付けながら返事を返した。

『いつまでも梨恵のこと好きって言ってられないかな~と思ってたときにさ、告白されたし、付き合うことにしたんだ。』

いつも好きって言ってたのにそんなに簡単に諦めるんだ。

『好き好き言ってたのも本気じゃなかったんでしょ。』

やっぱり本気じゃなかったじゃない。それが今証明されただけ。

『ひどいな~。入社してから3年も言いいつづけてたのに。』

『言い方が軽すぎて伝わらなかった。』

毎日顔を合わせるたびに、梨恵、今日もかわいいね。大好き~。なんて言われて誰が信じるのよ。

『おっかしいな~。毎日心を込めて伝えてたのにな~。』

頭を掻きながら苦笑する。
その言い方、そういうところが本気に見えなかったのよ。
一度だけでいいから、もっと真剣な顔で、「好きだ」って言ってくれてたら…。

『ハイハイ。どうもありがとう。それで?今日はその報告?』

『そ。やっぱり梨恵には言っといたほうがいいかな~。と思ってさ。』

『別に要らなかったわよ、報告なんて。』

これからは私以外の子に好きって言います。なんてそんな報告、いらない。


『冷たいな~。まぁ、実際梨恵には関係ないもんな。』

そう、関係ない。そんな権利ないくせにその言葉に勝手に傷付いている私は勝手だ。
翔平の言葉を真剣に取れないで疑って、きちんと向き合わないでスルーし続けた自分が悪いのに。

『そうよ。関係ない。』

自分に言い聞かせながら、ちょうど店員が運んできたビールを一気に流し込んだ。

『あぁ、俺の幸せに乾杯とかないのかよ。ひどいなぁ。まぁでも、これからはうるさくしないし、普通に仲のいい同期としてよろしくな。』

そう言って笑いながら私の中身が半分になったジョッキと自分のジョッキをカチンとぶつけた。

『こちらこそ、よろしく、同期。』

また、自分に言い聞かせる。

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