鬼常務の獲物は私!?



まだ朝礼は始まっていないし、出ても大丈夫だよね……。

というより、神永常務からの電話には、末端平社員の部下として出なければいけない気がする。それが、業務外の連絡事項だとしても……。

自分の席に座ったまま背中を丸めるようにして、「お待たせしました、福原です」と小声で応対した。


「俺だ。今すぐ常務室に来い」

「え? あ、あの、これから朝礼なので、今すぐには……あっ!」


今すぐには無理ですと言い終わらない内に、一方的に通話は切られてしまった。

どうしようかと、スマホ画面を見つめて考えていたら、営業部にどこかの部署から内線電話が掛かってきて、私のふたつ隣のデスクで元村係長が受話器を取った。


私はまだ迷いの中で困っていた。

常務からの呼び出しは行かないと恐いことになりそうな気がする。でも、朝礼をさぼるわけにはいかないし、今すぐと言われても、私にだって仕事があるし……。

つまり、常務室に行かない言い訳を考えていた。

ふたつ隣のデスクからは、内線電話に応対している元村係長の声が聞こえてくる。


「は、はい! ええ、それはもう、なんの問題もこちらにはございませんので……い、いえ、決してそんなことは!」

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