鬼常務の獲物は私!?
神永常務は書棚の横にあるテーブルの前で、前回と同じように珈琲を淹れてくれていた。
ふたりきりの状況で気になっていることは、さっき高山さんに言われた『特別な仕事』という言葉。
それを聞いた方がいいのか、それとも聞かない方がいいのかと迷っていたら、湯気立つ珈琲カップふたつを両手に、常務がこっちに歩いてきた。
私の座っている場所は前と同じ、3人掛け革張りソファーの左端で、常務はローテーブルのガラスの天板にカップをふたつ置くと、私のすぐ隣に腰を下ろした。
前回は間に空席をひとつ置いて、常務は右端に座ってくれたから珈琲を楽しめたが、今は近すぎる距離になにかを予感して、心が落ち着かない。
隣では常務が長い足を組んで、自分のカップに口を付けている。
「どうした? 飲まないのか?」と聞かれて、カップを手にするのではなく、恐る恐る気になっていることを聞いてみた。
「あの、高山さんが言っていた、私の特別な仕事って……」