鬼常務の獲物は私!?



常務がカップをソーサーの上に戻した。

切れ長のふたつの瞳が私をジッと見て、ニヤリと笑う。


「お前の特別な仕事とは……充電と言ったところか」


充電? その言葉に思わず、コンセントはどこだろうと、部屋の中をキョロキョロ見回してしまう。

すると「アホか」と言われてしまい、常務の左腕が私の肩を抱き寄せた。


「俺の心の充電だ。今日は9時半から重役会議がある。その後すぐに外に出て、取引先4ヶ所を回るから、社に戻るのは夜だな」


「お忙しいですね……」


「ああ。だから、ハードスケジュールの前にお前に触れさせてくれ」


重役会議まで、あと25分……。

最近心臓を忙しく働かせすぎていて、今もドキドキと鼓動は加速中。

25分もこの状態で、持つだろうか……。


肩を抱かれるまでなら大丈夫な気もするが、頭の中には一昨日のキスの映像が勝手に浮かんできてしまい、肩を抱かれる以上のことが起きる気がしてならない。

どうしようと心はうろたえて、お疲れ気味の心臓にますます負荷を与えてしまう。

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