鬼常務の獲物は私!?
驚いて目を開けたら、胸に触れているのは常務の唇だった。
私の両手首を拘束していた彼の手は離され、今は私を抱えるように背中に回されている。
「え?え? じ、常務……やめて下さい……」
驚き震える声でお願いするも、「だめだ」と言われて、彼の腕にさらに力が込められてしまった。
チクリとした痛みを、連続で数回感じていた。
それは常務の唇が私の胸に与える痛みで、強く10回ほど吸い付かれた後に、唇も腕も離された。
やっと羞恥から解放されて、大慌てでブラウスの襟を引き寄せ、胸もとを隠す。
神永常務は私の顔横に片腕を突き立て、真顔でジッと見据えて言った。
「お前には、男を妬かせる才能があるようだ……。まさかそれは、計算じゃないよな?」
日本語なのに、何を言われているのかさっぱり分からなかった。
ただ困った顔で常務の顔を見返すと、不機嫌そうだった口もとがニヤリと意地悪な笑みを浮かべた。
「奴が付けた傷痕の上に、俺の印を付けておいた。より濃く、より強烈なものをな」
俺の印って……。
恐る恐る襟もとを少しだけ開いて自分の胸を覗き込むと、左胸の上の、太郎くんが引っ掻いた小さな傷の上に、赤紫色内出血があった。
それもひとつじゃなく、重なりながら円を描くように10個ほど付けられているので、まるでバラのボディペイントみたいに見える。