鬼常務の獲物は私!?



「あの、これって……」


「見て分からないか? キスマークだ。
これが消えない内には、太郎の前で裸になれないよな」


「え? あ、あの……」


「そんな顔をしても、付けてしまったものはすぐには消せない。
しばらく困ることになるだろうが……俺を妬かせるお前が悪い。以後、気をつけろ」


「は、はい……」


一応うなずいてみたが、なにを気をつければいいのかは全く分かっていなかった。

今は冬で薄着になることもなく、キスマークを他人に見られる可能性も低いので困ることもない。

太郎くんの前で裸になれないよなと、言われたことも謎だ。

うちは狭いワンルーム。小さなお風呂場は台所の真横で脱衣所はなく、着替える時はいつも太郎くんから丸見えになる。

猫だから別にそれを恥ずかしいと思う必要もないのだけれど……あれ? 常務はもしかして……。

動物の前でも恥じらいは大切だと、私に教えたいのだろうか……。

うーん……神永常務の考え方は、私には理解できない……。


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