鬼常務の獲物は私!?



落ち込みから一転、興奮して私を怒鳴る星乃ちゃんを、両サイドの先輩たちが「まぁ、まぁ」となだめてくれた。

星乃ちゃんは深い溜息を吐き出すと、やっと自分のお昼ご飯をビニール袋から取り出した。

今日は古野屋の牛飯弁当で、ご飯の上に敷き詰められた牛肉に、思わず私の喉が鳴った。

すると星乃ちゃんが貴重な牛肉の一枚を、箸で摘んで私の口に入れてくれる。

ブツブツと文句を言いながらだけれど……。


「日菜がもたもたしているせいで、私の占いが外れてしまったじゃないか。
なぜ年末に常務とデートしないんだ。私の計画では、カウントダウンデートに誘われて、大晦日から交際がスタートする予定だったのに……」


星乃ちゃんの予定を狂わせてしまったのは申し訳ないが、それは私のせいじゃない。

星乃ちゃんが彼氏とサイパン旅行をしている間、神永常務もずっと海外にいた。

ただ、その目的は旅行ではなく出張で、年末年始も忙しく働いていたようだ。

神永常務と顔を合わせない長期休暇の間、メールが年明けに一度だけ送られてきた。

【明けましておめでとう】という年始の挨拶から始まり、海外出張について書かれていたメールの最後には【お前に触りたくて、気が狂いそうだ】という危険な言葉が……。


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