鬼常務の獲物は私!?
歩き出した星乃ちゃんに伸ばした手は、スカッと空を切ってしまう。
そんな鈍臭い私に代わり、他の営業部女子の皆さんが、星乃ちゃんを捕まえて元の位置に座らせてくれた。
「まぁまぁ、そこまでの強硬手段は、色々とマズイでしょ」
「そうそう。星乃は少し落ち着こうね」
「あ、あれじゃない? 太陽暦とか太陰暦とかあって、カレンダーの暦とズレていたりするんじゃないの? 私は占いに詳しくないけど、星乃の占いが外れたとは思ってないから」
皆んなで星乃ちゃんをなだめすかしてくれて、「もう一度占ってみたら? 今年の占いを」という結論にたどり着いた。
「よろしい。この辻占星乃が、今年の日菜の運勢を占ってしんぜよう」
無事に社内放送から気持ちを離してくれた星乃ちゃんは、一気に占いモードに突入する。
制服の上に羽織っているのは、濃い紫色のフード付きカーディガン。
そのフードをバサリと頭に被ると、占い師が身にまとっていそうなショールかベールに見えなくもなく、妖しさが増した気がする。
ポケットから取り出したのは愛用の水晶玉で、手の上に乗せて呪文を唱えた数秒後……狭い休憩室に星乃ちゃんのお告げが響いた。