鬼常務の獲物は私!?



着替えが済んで常務室に戻るのと同時に、神永常務と高山さんが部屋から出てきた。

常務は私の手から事務制服を取り上げ、それをポイとドアの内側に放り込むと、戸締りしている。

「こちらもどうぞ」と言われて高山さんに渡されたのは、私用のビジネスコートで、もう嫌とは言えず、廊下を歩き出したふたりの後ろを小走りでついて行った。


エレベーターで1階へ。

ドアが開くとエレベーター待ちをしていた他部署の男性社員ふたりと鉢合わせる。

神永常務の顔を見た途端に、ふたりは慌てて左右に分かれて道を作り、「お疲れ様です!」と頭を下げていた。

常務は「ああ」とだけ返事をして、ふたりの間に当然のように一歩を踏み出す。

それを後ろで見ていた私は、昔の大名か、異国の王子様みたいだと考えていた。

つい、常務が白タイツにカボチャパンツを履いて、マントを羽織っている姿を想像してしまう。

意外と似合うかもしれない……そう思いつつ、常務と高山さんに挟まれるようにしてエレベーターを降りたら、ビジネスウーマンスタイルの私に、男性社員ふたりは目を瞬かせていた。

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