鬼常務の獲物は私!?
ロビーの端にある長いエスカレーターで3階へ。
広くて長い廊下には大勢の人の姿があり、皆、同じ方向へ向かって歩いていた。
私たちも人の流れに乗り、メインホールと書かれたドアの方へ進んでいく。
表面が革張りの立派な両開きのドアは解放されていて、その横に受付があった。
順番が来ると高山さんが3人分のチケットを係りの人に渡し、手早く受付を済ませてくれて、メインホールに足を踏み入れる。
中は半すり鉢状に椅子席が並んでいて、席数は700くらい。
後ろのドアから入場したので、見下ろすステージがかなり遠くに感じた。
ステージの天井近くには横断幕が貼られ、『景仁会病院、心臓血管外科医長、新田宏和先生講演会』の文字が。
その横断幕と、この広いメインホールを見ながら素直な感想が湧いてきてしまう。
これが観劇や好きなアーティストのライブなら楽しめるのに、残念だなと……。
ホールの右側中央辺りに私たちの席があり、神永常務を真ん中にして左に高山さん、右に私が座った。
私たちの後からもどんどん流れ込んでくる客たちで、すぐに会場は満席状態となる。
思わず「うーん……」と腕組みして考え込んでしまうのは、やっぱりさっき抱いた素直な感情からのもので……。