鬼常務の獲物は私!?
新田先生の講演が始まった5分後、大型スクリーンには今、心臓手術の動画が流されていた。
「冠動脈バイパス手術におけるーー私の医療チームは手術支援ロボット、ダヴィンチのーーとなりまして、TECABの技術向上のためにーー」
聞く価値があるとは思えないと言っていた神永常務だが、時々手帳になにかをメモしながら、話を真面目に聞いているみたい。
その隣の私はというと……新田先生の話がさっぱり理解できず、難しい医療用語が徐々に子守唄のように聞こえてきた。
さらには、スクリーン上の心電図の波形が、催眠術のように私を眠りへと導くから、カックンカックンと頭が揺れて、ハッとすることを繰り返してしまう。
これも一応仕事なのだから、眠ってはいけない。
でも眠い……寝たらダメ……やっぱり眠い……。
すると左隣からクスリと笑う声がして、頭の上に大きな手が乗った。
その手が私の頭を左側に倒し、ちょうどよい高さのなにかに頭を持たれてしまったら、もう眠気と戦うことはできない。
私の意識はそのまま、夢の世界へと吸い込まれてしまった。
あ……太郎くんがいる。
野の花が咲き乱れる暖かな原っぱで、尻尾をピンと立て、ご機嫌な様子の太郎くんが私を待っていてくれた。