鬼常務の獲物は私!?
慌ててその場を離れ、広いロビーを高山さんを捜してウロウロする。
でも、似たような色合いのスーツ姿の男性が多くて、なかなか見つからない。
急ぎだと言われていたのにどうしようと困っていたら、高山さんの方から私を見つけてくれた。
「福原さん、神永常務とご一緒ではなかったのですか?」
「あ、はい。さっきまで一緒にいたんですが、急ぎでこれを高山さんに渡すように言われました」
A3サイズの白い封筒を手渡すと、高山さんは心当たりがないのか、不思議そうな顔をして封筒の中を覗き込む。
それから、遠くの壁際で理事長親子とまだ会話中の神永常務に視線を移し、「ああ、そういうことでしたか……」と、ひとり頷いていた。
なにがそういうことなのか分からず聞いてみた。
すると、「あなたを守りたかった……もしくは、独占欲とも言います」と、サッパリ分からない説明を返されてしまう。
首をゆっくり横に傾けた私を見て、高山さんはクスリと笑った。
「理事長先生の隣いる男性は、息子さんでしょうか? 顔が似ていますね」
「はい、そうです。景仁会病院の事務長さんだと言ってました」