鬼常務の獲物は私!?
「そうですか。たしか理事長先生には息子さんがふたりいらっしゃって、その内のおひとりは独身の40代。お見合いを繰り返しているとの噂があります」
「はあ……」
「つまり、理事長の息子さんが福原さんを気に入りそうな雰囲気を感じ、常務はあなたを遠ざけたかったのではないでしょうか。
心当たりはありませんか?」
心当たり……。そう聞かれて、ジッと見つめられたことをすぐに思い出す。
てっきり、歯にお弁当の食べカスでも付いているのかと思ったのに、事務長さんにそういう目で見られていたなんて……。
恥ずかしさに赤くなりつつも、こんな私が一目惚れされるだろうかと、怪しむ気持ちもある。
一目惚れに関しては事務長さんに確認を取るわけにもいかないので置いておくとして、神永常務は……。
高山さんの手に渡った白い封筒を指差し、聞いてみた。
「あの、それじゃ……急ぎでというのは嘘だったんですか?」
高山さんがニッコリ笑って封筒から半分引き出し見せてくれたものは、うちの会社を紹介するパンフレットだった。
営業部にも大量に置いてあるもので、私もよく目にしている。
これが急ぎの用事であるはずがなく、高山さんの言った通り、常務はあの場から私を遠ざけたかったんだということが理解できた。