鬼常務の獲物は私!?
神永常務……。
まだ理事長親子と立ち話をしているスーツの背中を、遠くから見つめた。
心臓がトクトクと温かなリズムを刻み始める。
心が喜んでいる気がして、どうしてそんな気持ちになるのか分からずに戸惑っていた。
高山さんはいつもの事務的な笑顔ではなく、今は目を細めて嬉しそうに私を見ている。
「福原さん、神永常務はビジネスマンとしても男性としても、優れています。それは私が保証します」
「はい……でも……」
高山さんが言いたいことは分かっている。
神永常務のアプローチを受け止めなさいと言いたいのだろう。
それに頷けず、困るばかりの私から視線を離し、高山さんは地下駐車場に繋がる下りのエスカレーターに注目した。
「おっと、あそこにいらっしゃるのは、うちのお得意様、篠田ハートクリニックの院長先生。
私はご挨拶に伺ってきますので、福原さんはどこかで神永常務の仕事が終わるのを待っていて下さい」
「はい、分かりました……」