鬼常務の獲物は私!?



飲食店の案内板から声のする方へ顔を向けると、幼稚園児くらいの男の子がふたり、テーブルの周りをグルグルと回って、はしゃいでいるのが見えた。

よく似た顔をしているので、双子なのだろう。

ふたりともベストに蝶ネクタイと、きちんとした格好をしているが、かなりヤンチャそうだ。

私と同じ講演会に参加していたのだろうかと、考えていた。

他の会議場での催しに、親に連れられて参加していたのかもしれないが、恐らく子供向けではないだろうし、解放された今、走り回りたくなる気持ちはよく分かる。

興味のない話を聞かなくてはならないのは、大人でも大変だ。

私なら眠ってしまうところだが、子供は動きたくてウズウズしてしまうはず。

テーブルの上には、ペットボトルのジュースが2本乗っていた。

ここでジュースを飲んで待っていて、お母さんはご挨拶回りをしてくるから……そんなふうに言われたのではないかと、推測してみた。

そうすると、あの子たちの母親は働きながら双子を育てているということで、えらいなと、素直な感想が湧いてくる。

のろまな私には、仕事と子育ての両立は無理かもしれない。

世の中の働くお母さんたちって、すごいよね……。


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