鬼常務の獲物は私!?
テーブル周囲を走っていたふたりは、ひとりがもう一人を追いかけるという、鬼ごっこに遊びをシフトさせた。
逃げている方の子がテーブルから離れて、ロビー活動中の大人たちの間を逃げ回る。
当然追いかける方の子も、走り回る範囲を拡大させていった。
可愛いし、走りたい気持ちも分かるけれど、人にぶつかりそうで、ちょっと危ないな……。
注意しに行った方がいいかな?
でも、私の遅い足じゃ、ふたりを捕まえることができずに、一緒に鬼ごっこをする形になってしまいそう……。
そう思っていたら、逃げている子が上りのエスカレーターにひとりで乗ってしまった。
しかも、乗り口付近で上ったり駆け下りたりを繰り返して、もうひとりの子が追いかけてくるのを待っている。
開演間近の催しがないのか、今はちょうど人の流れが切れていて、上りのエスカレーターを利用している人は他になく、注意してくれる人もいなかった。
もうひとりの子も、走ってすぐにエスカレーター前にやって来た。
やっぱり危ないから注意しに行こうと、私はベンチから立ち上がり……目を見開いた。
追いかけてきた子もエスカレーターに乗るかと思いきや、乗り口付近の手すりの外側に回ったからだ。