鬼常務の獲物は私!?



無事だったんだよね……?
ああ……よかった……。

私は依然床にうつ伏せで倒れたまま、数メートル先の騒ぎをホッとしながら見ていた。

すると、人垣を掻き分けるようにして、神永常務が出てきた。

後ろに呼び止める声がしているが、常務は片手を上げてそれを断っている。

そして、何事もなかったかのように颯爽と歩き、私の前まで来ると床に片膝をついた。


「子供は無傷だ。安心しろ」

「はい……よかったです……」

「お前も一応、駆けつけようとしたみたいだな」

「はい……また転んで、ごめんなさい……」


何の役にも立てなかった自分らしい結末を情けなく思っていると、「役には立ったぞ」と、不思議なことを言われた。


「俺があの子に気づくことができたのは、お前が危ないと叫んでくれたお陰だ。
日菜子が叫ばなかったら、反応が遅れて間に合わなかっただろう」


そうなんだ……私の声に反応して、神永常務は走り出したのか……。

鈍臭くてマヌケな私だけれど、時には役立つこともあるみたい……。


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