鬼常務の獲物は私!?
狩りの始まり
◇◇◇
翌日。今日は朝からずっと忙しい。
というのは仕事についてではなく、出勤してからずっと、営業部の色々な社員に声をかけられるからだ。
昨日の私の大失態を、皆が心配してくれた。
その後、社長からお咎めがあったのかと幾度となく質問されて、その度に同じ答えを返していた。
「社長は怒ってないから心配するなと、神永常務が言っていたのですが……」
ハプニング以降、まだ社長にはお目にかかっていない。
昨日常務が『明日、俺と一緒に謝りに行くぞ』と言っていたので連絡を待っているのだが、音沙汰ないままにお昼になってしまった。
自分の席に座り、鳴らない電話機を見ながら、どうしようと考える。
神永常務は忙しい人だから、謝罪の件は忘れてしまったのかもしれない。
私から常務に連絡してみようか?
うーん……それは無理かも。
昨日は告白されて押し倒されて、驚いたり焦ったり、心を激しく乱された。
私の中での常務のイメージは"恐い人"から変わらないし、『覚悟しておけ』と意味深なセリフまで残されて、出勤してからずっとビクビクしっ放し。
自分から常務に連絡を取るなんて、そんな勇気は持てそうにない。