鬼常務の獲物は私!?



心配事、もうひとつ残っていたみたい……。

太郎くんのことを言われたら、心から喜びが消えてしまい、再び悩みの中に落とされてしまう。

今回のことで、常務に対する自分の気持ちがやっと分かった。

私は神永常務が好き……その気持ちはもう、ごまかすことができないだろう。

『俺の女になれ』と言われたら嬉しくて、今すぐにでも頷きたくなってしまうが、やっぱりできない。

太郎くんを捨てるなんて、そんなひどいことは私には無理。

誰かに譲るのも嫌。一度飼い始めたのだから最後まで責任をもってお世話したいし、太郎くんがいないと私が寂しくて……。


考える時間を与えてくれているのか、神永常務は運転を続けるだけで、もう話しかけてこなかった。

私はうつむいて、隣に聞こえないように小さな溜息をついている。

どうして常務は猫嫌いなのだろう……。
それさえなければ、なんの問題もなくお付き合いできるのに……。

小さい頃に引っ掻かれて、トラウマになったとか? それとも猫アレルギー?

なんとか打開策を見つけようとして、「アレルギーはありますか?」と聞いてみた。

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