鬼常務の獲物は私!?
「は? 唐突な質問だな」と、眉を寄せた常務だが「花粉が少し。他はなし」と教えてくれた。
その返事にうつむいていた顔を上げると、心に希望が湧いてきた。
猫アレルギーならどうしようもないと思ったけれど、違うのなら望みはあるかもしれない……。
過去に常務がどんな猫たちに出会い、猫嫌いになってしまったのかは分からないが、うちの太郎くんはいい子だから、会えばきっと好きになってくれる。
いや、きっとじゃなくて、絶対にそうならないと困ってしまう。
恋の行方を太郎くんに託すことに決めた私は、「あの!」と大きな声で話しかけて、運転中の常務の腕を引っ張った。
「おわっ! 危ない、やめろ!」
車が蛇行して、慌ててハンドルを戻した常務は、すぐにハザードランプを点灯させ、少し先の路肩に停車した。
「日菜子! 運転中は……」
常務の注意も聞いていられず、話を遮って真剣に訴える。
「お願いがあります!
これからうちに来て、太郎くんに会っていただけないでしょうか?」
「あ"……?」