鬼常務の獲物は私!?
それなら、どうしたらいいのだろう?
営業部長に相談して、社長への謝罪に付き添ってもらおうか?
菅野部長は恐くないから、お願いするのに躊躇はなかった。
私がミスしても、『あーらら、日菜ちゃん、やっちゃったんだ。次から気をつけるんだよ』と優しく注意してくれるだけで、叱られたことはない。
なぜか、私より遥かに優秀な他の社員たちは、部長に厳しく叱られることがあるけれど。
考えた結果、優しい菅野部長に相談するのがいいという結論を出し、やりかけの発注伝票の整理を中断した。
席を立って部長のデスクに向かおうとしたら、「日菜、お昼に入るよ」と、星乃ちゃんに呼び止められた。
「先に入っててくれる?
私、菅野部長に相談してから行くね」
「部長なら、30分前に出かけたよ。
今日は中山記念病院に営業だから、しばらく戻れないはず」
中山記念病院は、たしか……所在地が東京じゃなかった気がする。
神奈川だったか千葉だったか忘れたけれど、都外なら星乃ちゃんの言う通り、帰りはきっと夕方だろう。
頼ろうとしていた菅野部長がダメだと分かり、私はまた悩みの中に落とされる。
どうしよう……やっぱり常務に……いや、それも恐いから……。
困りながらもお腹は正直で、グウと鳴る。
それで悩むのを中断して、取り敢えずお昼休憩に入ることにした。