鬼常務の獲物は私!?



「太郎くん、お願いだから、逃げないでこっち来てよー」


猫タワーは天井近くまである長い棒に、猫が休める棚が幾つも付いている物。

その一番上の棚に避難されたら、私の手は届かない。

それで、小さなローテーブルをズズズと猫タワーの横に移動して、それを踏み台に、太郎くんの体に手を伸ばした。

すると太郎くんは猫タワーから飛び降り、私の頭を踏みつけ、ベッドの上に華麗に着地する。

その後もテレビの上、キッチン、テーブルの下、タンスの上と、狭い部屋の中を逃げ回り、私はあちこちに体をぶつけながら必死に追いかけ、説得を続けた。


「太郎くんお願い! 金印のスペシャル猫缶、今度買ってあげるから!」

「ニ"ャー」

「あ、待ってってば! 分かったよ、猫缶じゃなくてマグロのお刺身買ってあげる。赤身じゃなくて中トロだよ?」

「ニ"ャ、ニ"ャー」

「分かった……泣く泣く大トロにする。
だから、お願い。太郎くんの可愛いところを常務に見せてあげて? 猫嫌いのままじゃ、私……失恋しちゃうんだからー!」


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