鬼常務の獲物は私!?
ご近所から苦情がきてもおかしくないほどにドタバタ追いかけっこをする私たち。
再びベッドの下に逃げ込んだ太郎くんを、私も頭と片腕を潜り込ませて、やっとのことで引きずり出した。
ラグに爪を引っ掛け、最後の抵抗を見せる太郎くん。その両脇を両手で掴んで持ち上げると、足をバタつかせて大暴れ。
逃げられない内に、急いで神永常務とご対面させなくちゃ……。
そう思って振り向いたら……常務は廊下と部屋の境目で、なぜか四つん這いの姿勢になり、ガックリとうなだれていた。
あ、あれ……玄関をくぐる前までは、出陣前の戦国武将みたいな雰囲気だったのに、一体どうしてしまったのか……。
「ギニャー! ブニャー!」と、もがく太郎くんと一緒に常務の側に寄り、しゃがみ込んで声をかけた。
「あの……具合が悪いんですか?」
「……」
「あ、もしかして、床に落ちたバレンタインクッキーを食べたせいで、腹痛ですか?
だから食べない方がいいと言ったのに……トイレならそこに……」
お腹の調子を心配してあげたら、ガバッと顔を上げた常務に「バカ野郎‼︎」と怒鳴られてしまった。