鬼常務の獲物は私!?



「え……? 言いませんでした?」

「言ってない」

「じゃあ、常務は太郎くんのこと、なんだと思って……」


犬かウサギが、それともハムスターだと思っていたのだろうか?

まさか、私の苦手な蛙や蛇じゃないよね?

そんな疑問が生まれて首を傾げると、「人間」と言われて驚いた。


「お前が男と同棲中で、しかもそいつは卑怯なクズ野郎だと思っていた。お前の優しさに付け込んで働かせ、自分は遊び暮らしているニートかと思ってな」


太郎くんが人間の男で、卑怯なクズ野郎って……。

とんでもない勘違いに驚かされた後は、妙に納得してしまう。

今まで会話が噛み合わないと感じたのは、そのせいだったみたい。

胸にキスマークを付けられたことも、ストッキングの伝線部分をなぞられ辱めを受けたことも、常務の嫉妬心からくる行動だったのか……。

そして今日、太郎くんに会って誤解が解け、思わず床に両手をつくほどに脱力してしまった……どうやら、そういうことのようだ。


常務の肩に頰を当てながら、おかしくなって私も笑ってしまった。

すると低い声で、「お前が笑うな」と叱られてしまう。


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