鬼常務の獲物は私!?
「い、一緒に入ろうということですか……?」
「そうだ。かなり狭いが、なんとか入れるだろう」
「あ、あの、狭さだけが問題じゃなくて……」
男性経験のない私に、いきなり一緒にシャワーはハードルが高すぎる。
心臓を忙しく働かせながら、心の中でアタフタしていると、後ろから私の肩に手が掛けられた。
「なんだ、脱がせて欲しいのか?」
「そ、そんなんじゃ……」
「こっち向け。望み通りにしてやるから」
グイッと肩を引かれ、強制的に常務の方を向かされてしまう。
再び目に飛び込んできた筋肉美に、慌てて体をもう半回転させ、背を向けた。
結局クルリと一回転しただけの滑稽な私に、「おい……」と不満げな声が投げられる。
「す、すみませんが、あの、お風呂は順番でお願いします。恥ずかしくてダメです。
一緒に入ればたぶん、頭に血が上って倒れると思います」
「それは困るな」
「そうです、困ります! すっごく困ります!
ですから、あの、先に入って下さい。お願いします!」
残念そうな溜息が聞こえたが、「仕方ないな」というありがたい返事ももらうことができた。
浴室に入って行く音とドアが閉まる音がして、シャワーの音も聞こえてから、私はやっと後ろを振り向いた。