鬼常務の獲物は私!?
すりガラス越しにぼんやりとした常務の裸体が見えている。
それでも、さっきの間近で見てしまった衝撃に比べたら、このくらいのドキドキには耐えられそうだ。
大きく息を吐き出してから、動き始める。
常務が脱ぎ捨てたスーツとワイシャツ、ネクタイを、ハンガーに掛けて壁に吊るし、下着は……顔を赤くしながら、畳んでカゴの中に入れ、その上にバスタオルを乗せておいた。
次になにをすべきか考えていると、夕食を終えた太郎くんが私の前を横切り、ベッドの方へ歩いて行った。
それを見て、神永常務もまだ夕食を食べていないことを思い出す。
私には空腹を感じる余裕はないけれど、常務はお腹が空いているかもしれない……というより、シャワーの後には是非、食事をしてほしい。
満腹になるまで食べさせたら、眠気に襲われるはずで、そのままなにもせずに朝まで眠ってくれるのではないかと、いい考えが閃いた。
そうだ、それがいい……。
恋愛経験不足の私でも、シャワーの後の展開くらいは予想がつく。
それを嫌だとは思わないが、早すぎると思う。
まだ覚悟が決まっていないから、考えただけでも心臓が壊れてしまいそうで、もう少し待ってほしいというのが本音だった。