鬼常務の獲物は私!?
さっき踏み台にしてしまったローテーブルをテレビの前にセッティングして、表面を綺麗に拭いて料理を運ぶ。
小さなテーブルの上は、はみ出しそうなほどに料理でいっぱい。
いつも高級な物ばかり食べていそうな常務の口に合わないかもしれないけれど、量的にはこれだけあれば満腹以上になりそうな気がする。
テーブルを見下ろし、お酒があればもっと効果的だったかもと考えていたら、後ろから裸の腕が伸びてきて私の体に回された。
再び鼓動が速度を上げる中で、耳に彼の声が忍び込む。
「日菜子、作ってくれてありがとう。
料理上手なんだな。旨そうだ。だが……お前の体の方がもっと旨そ……」
「あ、あ、あの! 私、お風呂に入ってきますから、食べていて下さい。一生懸命に作ったので、残さず全部食べて下さいね!」
「お前は食べないのか?」
「あ、えーと、その、摘み食いしながら作ったので、お腹いっぱいになっちゃって……」
本当は味見くらいしかしていないけれど、今は食欲どころじゃなく、腰にバスタオルを巻いただけの常務に心の中は大慌てだ。
「とにかく、食べて下さい!」と会話を終了させ、体に回された裸の腕の中から逃げ出し、浴室に駆け込んだ。