鬼常務の獲物は私!?



シャワーを浴び続けること、およそ1時間。

体はとっくに洗い終えているのだけれど、ダラダラとお湯の無駄遣いをしているのは、時間を稼ぐため。

そろそろ、いいだろうか……?

神永常務はきっと夕食を終えていると思う。

食べ終えて、テレビを見ながら私を待っている内に、満腹感からそろそろ眠くなってきた頃じゃないかと……それを期待していた。


出しっ放しにしていたシャワーを止めてみる。

するとドアの向こうはやけに静かで、テレビの音もしなかった。

ほんの少しだけドアを開けて耳を澄ますと……スースーと寝息らしき音が聞こえてきた。

部屋の明かりも落とされ、豆電球しかついていないことにも気づく。


本当に寝てくれたみたい……よかった……。

神永常務には申し訳ないが、初心者の私としてはこの状況がありがたい。もう少しゆっくり恋愛を進めてくれないと、心が忙しくて大変だから。

ホッと息を吐き出し、バスタオルで体を拭いて、それを体に巻きつけた。

音を立てないように静かに浴室を出て、いつも着替えを入れているカゴに手を伸ばし、「あ……」と呟く。

入っているのは常務の脱いだ下着だけで、私の着替えの下着もパジャマもタンスの中。

さっき、抱きしめられて慌てて浴室に駆け込んだため、用意するのを忘れてしまった。


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