鬼常務の獲物は私!?



タンスはベッドの横で、バスタオルを巻いただけの姿で、キッチンスペースから出ていかなければならなかった。

間仕切りの食器棚が邪魔して常務の様子が見えないので、もう一度耳を澄ませてみる。

スースーと規則正しい寝息は聞こえているし、明かりを豆電球に切り替えたということは、寝る気満々で眠っているのだと思っていいはず。


よし、大丈夫だと確信して歩き出す。

猫のように足音を立てずにキッチンスペースから出て、タンスの方に向かった。

薄明かりの中で目をこらすと、神永常務は私のベッドで寝ていた。

毛布から裸の肩がはみ出している。

壁の方を向いているので顔は見えないが、呼吸でわずかに肩が上下する以外に動きがないので、ぐっすり眠っているように見えた。

太郎くんは……と思ったら、常務と壁の間で毛布の上に丸まって、一緒に寝ている。

猫は暖かくて狭い場所が好きだから、という単純な理由だと思うけれど、仲良くなってくれた気がして、嬉しくなってしまった。


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