鬼常務の獲物は私!?
太郎くんは私の背中を踏みつけ、いち早く猫タワーに避難。
常務の両腕がしっかりと背中に回され逃げられない私は、ジタバタもがいて喚くだけ。
「騙すなんて、ひどいです!」
「先に騙したのはお前だろ」
「私はなにも……」
「太郎が猫だと言わなかった」
「それは……」
騙したつもりはなく、言い忘れていただけ。
それについてはさっき謝ったし、勝手に勘違いした常務も悪いから、引き分けでいいと思う。
離してくれない腕に慌てつつ、心で反論していたら、文句の言葉を付け足されてしまった。
「今も騙そうとしただろ」
「え? なにをですか?」
「食いきれないほど料理を出して、腹一杯になった俺が眠ってしまうことを企んでいたんじゃないのか?」
「あ……」
バレていたみたい……。
名案だと思い、その通りになってホッとしていたのに、引っかかった振りをして騙し返すなんて……私の浅知恵じゃ、常務には敵わないということなのか……。
くるりと視界が反転して、体の位置を入れ替えられた。
私がベッドに仰向けに寝た姿勢で、常務は私の上に馬乗りになっている。
どうしよう……と、この後に及んでまだ逃げ道を探している私に、彼はキッパリ言い放つ。