鬼常務の獲物は私!?
「今夜、お前を抱く。
逃がすつもりはないから、覚悟を決めてくれ」
「ま、待って下さい! あの、付き合ったのは今日だし、早すぎる気が……」
「なにを言っている。出会いは日菜子が入社してきた5、6年も前のことだろ。
お前を手に入れたいと思ったのは昨年の忘年会後で、それからずっと我慢し続けてきたんだ。むしろ遅すぎるくらいだ」
そう言われたら、そんな気もしてくるが……私には心の準備期間がもう少し欲しいところ。
決して勿体ぶっている訳じゃなく、この恥ずかしさをどうやって制御していいのか分からないのだ。
じっと見下ろす瞳と視線を合わせることができなくて、オロオロと目を泳がせてしまう。
すると叱るのではなく、「俺を見てくれ、頼むから……」とお願いされてしまった。
戸惑いながら視線を合わせると、心臓がドクンと大きく跳ねる。
魅力的に艶めく、ふたつの黒い瞳。
その瞳が「お前が欲しい」と告げていた。
強く激しく、まるで砂漠で水を求める旅人みたいに渇きを訴え、私に潤いを求めていた。
その想いの強さに心打たれる。
こんなに求めてくれるなんて……その幸せに気づくと、戸惑いが嘘のように消えていった。
私が欲しいという、その想いに応えてあげたい……いや、私の方こそ、彼に抱いてもらいたいという欲求が、心の奥から湧き上がっていた。