鬼常務の獲物は私!?
「知りたい気持ちは分かるが、一旦落ち着こう。
そういうことに免疫の薄い日菜が、フリーズしてしまう」
その通りだと、私は首をブンブンと縦に振って同意した。
27歳でやっとバージンを卒業した私は、ここにいる皆さんより経験値が遥かに低いと思う。
恥ずかしすぎて逃げたくなるので、過激な質問は勘弁してもらいたい。
皆んなが攻撃をやめてくれて、助け舟を出してくれた星乃ちゃんに、感謝の眼差しを向けたのだが……。
星乃ちゃんはカレーの上に乗っている大きなカツをひと口で食べて、それから、皆んなのテンションをさらに上げる個人的な事情をサラリと暴露してくれた。
「先週から日菜は、神永常務と同棲しているので、皆んなが好き勝手に想像したプレイは、ひと通り経験済みだと思われる」
「ギャーッ‼︎」とさっきよりも大きな悲鳴が上がり、猫たちは一斉に高い場所や狭い場所に避難してしまった。
【猫ちゃんたちを、驚かせないでね!】と壁に貼られた注意書きを気にしつつ、私は真っ赤になっていた。
星乃ちゃんの言ったことは、その通りで、先週の日曜日に神永常務の住む2LDKの高層マンションに引っ越した。
もちろん私は付き合いたてだからと反対した。
でも常務が、オンボロマンションのセキュリティーをしきりに心配して、半ば強制的に引越しさせられてしまったのだ。