鬼常務の獲物は私!?
私の膝の上で気を許してくれるかわい子ちゃんに、思わず頰が緩み、デレデレしてしまう。
するとさっき茶々丸くんを連れてきてくれた店員さんが、笑顔で近づいてきて言った。
「あら〜小雪ちゃんが甘えるなんて、珍しい。
お客さんのこと、好きみたいですね」
「この子、小雪ちゃんというんですか。
いつもは、膝に乗ってこないんですか?」
「そうなの。まだうちに来たばかりだからかもしれないけど、中々お客さんに慣れてくれなくて……」
店員さんの話によると、小雪ちゃんはひと月前にこの店に来たそうだ。
前の飼い主さんにどうしても飼えない事情ができて、引き取りを頼まれたらしい。
ここは里親募集型の猫カフェなので、様々な事情で預けられる猫がいて、その猫とお客さんの相性がよければ、新しい里親として引き取られるケースもある。
小雪ちゃんは私に撫でられている内に、丸まってウトウトし始めていた。
それを見て店員さんが、私に言う。
「小雪ちゃんの里親になってもらえませんか?」
「え⁉︎」
「この子、臆病な性格みたいで、色んな人に触られる猫カフェよりも、普通のお宅で飼われる方が幸せだと思うんです」
一瞬、「飼ってあげたい!」と思ってしまったが、すぐに太郎くんの顔が浮かんで考え込んでしまった。