鬼常務の獲物は私!?



それからしばらくの間、太郎くんと小雪ちゃんの様子を、私はハラハラしながら見守り続けていた。

そろそろ大丈夫かなと思い、キャリーバッグの中から小雪ちゃんを出したら、私の足の間に体を潜り込ませて震えている。

あらら……これは可哀相。

どうやら安心できる場所が必要なようなので、まずは私の部屋に連れて行った。

『お前の部屋だ』と言われて神永常務に貸してもらっている8畳の洋間には、新しい物と以前から使っている物が混在している。

常務が新しく買ってくれたドレッサーと、同じく買ってくれたキャビネットの間の狭いスペースに、毛布を丸めて置いてあげると、その中にすっぽりと潜り込んだ小雪ちゃんは、やっと落ち着くことができたみたい。

太郎くんは入ってこない。

開けっ放しのドアの向こうから、小雪ちゃんを意識しつつ、廊下をウロウロしているだけなので、大丈夫そうだ。

飼い主の勘で、多分、2匹の相性は悪くないと思う。

少しずつ距離を縮めて、いつかは仲良くくっついて眠る姿を見られるといいなと思っていた。


2匹の様子を廊下に座ってジッと見守ること、1時間。時刻は17時半になっていた。

神永常務の帰宅は、18時半と聞いている。

帰ってきてすぐ夕食を食べられるように、そろそろ作り始めないと……そう思ってハッとした。


< 258 / 372 >

この作品をシェア

pagetop