鬼常務の獲物は私!?



太郎くんと小雪ちゃんの相性ばかり気にしていたけれど、神永常務に飼ってもいいかを確認していなかった。

ここは私の家じゃなく置いてもらっている身なのだから、家主である彼の承諾を得てから連れ帰るべきだったのかも。

当たり前のことがスッポリと頭から抜け落ちていて、それに気づいた私はどうしようと考え込んだ。

今から聞いても、もう連れてきちゃったし……。

帰ってきた常務が小雪ちゃんを見たら、怒るだろうか……?

でも前に、『お前が何匹猫を飼っていようと、別にどうでもいい』と言ってくれたから、意外とすんなりお許しをいただけそうな気もするし……。


悩んでいても時間がなくなるだけなので、エプロンを着てキッチンに立つ。

広いリビングと繋がっているオープンキッチンは、引っ越した日にひと目見て、歓喜したものだった。

色んな料理をたくさん作れそうな気がして、テンションが上がってしまったのだが、オシャレな料理も高級料理も作れないので、結局いつもと変わらない庶民の食卓になってしまっている。

今日の献立も、そんな感じ。
カレイの煮付けと、水菜と大根と豆腐のサラダ。山芋と挽肉の山椒炒めに、粕汁。

そんなメニューでも、常務は喜んで食べてくれるのがありがたい。

勝手に高級料理ばかり食べていそうなイメージを持っていたのだけれど、フォアグラよりもフカヒレよりも、私が作る家庭料理の方が好きだと言ってくれて……常務のために料理を作るのが、今の私の楽しみのひとつとなっている。


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