鬼常務の獲物は私!?



自分のマヌケさに呆れつつ、寝転がったまま小雪ちゃんの姿を探したら……。


「わっ!小雪ちゃん、そこに乗っちゃダ……」


乗ったらダメと言い終わらない内に、惨事が起きてしまった。

逃げ場所を求める白い体は、ダイニングの椅子からテーブルへと、ピョンピョーンと飛び乗ってしまったのだ。

テーブルの上になにもないのならいいのだが、さっき並べたばかりの夕食がある。

熱いものもあって火傷したら大変だと思った途端に、ガチャンと食器の倒れる音を聞いた。


「小雪ちゃん‼︎」


慌てて立ち上がるのと同時に、テーブルの縁から茶色の液体が流れ落ちるのを目にして、体の一部が茶色に染まった小雪ちゃんも一緒に落ちてきた。

急いで腕に抱いた小雪ちゃんは、火傷もケガもしていないようで、ひとまずホッと息を吐き出す。

それから、一体なにをひっくり返してしまったのだろうかとテーブルを見たら、サラダにかけるために作った和風ドレッシングの器だった。


「火傷しなくてよかった〜。でも、せっかくの綺麗な白い体が汚れちゃったね〜」


白茶の猫に変身してしまった小雪ちゃんにアハハと笑っていたが、すぐに笑っている場合じゃないことに気づく。

もうすぐ神永常務が帰ってくるんだった。

急いでここを片付けて、小雪ちゃんを洗ってあげないと。

小雪ちゃんのチャームポイントは真っ白で艶々な毛並みと、サファイアみたいな青い瞳。

常務が「飼っていいぞ」と言ってくれるように、最大限に綺麗にしておかなくては。


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