鬼常務の獲物は私!?
今日のキスが一段と激しいのは、どうしてなのか……。下着エプロンで、私から誘っているのだと、勘違いさせてしまったせいだろうか……。
息苦しさと快感を同時に与えられて涙目になっていたら、やっと唇が離された。
しかし呼吸を整える暇は与えてもらえず、今度は体をクルリと反転させられる。
浴室のドアに、頰と胸を押し当てる格好になった私。
背中の素肌に彼の熱い唇があたり、少し冷たい指先で円を描かれてから、背骨をそっとなぞられた。
ゾクゾクとした快感が体の奥から押し寄せてきて、口から自然と甘い声が漏れてしまう。
ブラジャーのホックを外され、パンツの縁に指が掛かり、耳もとには私を誘う魅惑的な声が……。
「ここでするか? それともバスルームでするか?」
バスルーム……と答えそうになった時、カリカリと扉を引っ掻くような小さな音を聞いた。
快楽に流されそうになっていた気持ちは、その音で引き戻され、ハッと我に返った。
こんなことをしている場合じゃなく、小雪ちゃんのことを話さなければいけなかったんだ……。
ドアノブには常務の右手が掛けられていた。
慌ててその手をドアノブから引き剥がすと、再びドアを背にして、立ち塞がる。
「日菜子、どうした?」
急に真顔になった私に、彼が問う。
「あの、あの……一生に一度のお願いがあります」
そう言うと、常務も真面目な顔になり、色気を抑えて聞く体制に入ってくれた。