鬼常務の獲物は私!?
「一生に一度とは、随分、大げさだな。
言ってみろ。できる限りのことはしてやるから」
「本当ですか! ありがとうございます!
じゃあ、小雪ちゃんも、ここで一緒に暮らしていいってことですよね?」
「小雪……?」
腕組みをして私を見下ろす、彼の眉間にシワが寄った。
あれ……なんだか、雲行きが怪しくなったような……。
不穏な空気を感じて途端に目を泳がせる私を、神永常務は低い声で問いただす。
「ここで一緒に暮らすとは、どういう意味だ。
俺にお前以外の女と、寝食を共にしろということか?」
「ええと、その……簡単に言うと、そういうことになるんですけど……」
小声でゴニョゴニョ答えたら、常務の眉間にさらに深いシワが寄ってしまい、私は肩をすくめて縮こまった。
「失望した。俺に対するお前の愛情など、しょせん、その程度ということか」
「え? ち、違っ……」
「なにが違うというんだ。
大体、小雪とは誰だ。金欠で行き場を失った友達か?」
ドンと扉を叩くようにして、私の顔横に左腕が突き立てられた。
右手はズボンのポケットに突っ込まれて、不愉快極まりないといった顔をして睨んでくる。
ビクッと肩を揺らして怯えつつも、なんとか説得しなければと考えていた。