鬼常務の獲物は私!?



無事に飼ってもいいとお許しをいただけて、満面の笑みでバスルームのドアを開け、早速、小雪ちゃんを紹介した。


「この子です。真っ白で青い目が綺麗な美人猫ちゃんです」


臆病な性格の小雪ちゃんは、尻尾を後ろ足の間に入れて震えていた。

そんな小雪ちゃんの様子をじっと見下ろしていた常務は、床に片膝をつくと、白い体をひょいと抱き上げ、自分の顔に近づけた。

「可愛いな」

そのひと言で、私のテンションは跳ね上がる。

「ですよね!ですよね!
すっごく可愛いですよね!」

「ああ。太郎に比べると、随分と可愛いく思えるな」

「え……?」


その言い方だと、まるで太郎くんが可愛くないと言っているみたいで引っかかる。

「あの、太郎くんも小雪ちゃんに負けないくらいに、可愛い猫なんですけど……」

そんな風に控え目に反論してみたら、口の端を曲げた常務に「お前にとってはな」と言われてしまった。


「太郎くんのこと、嫌いですか……?」

猫嫌いじゃないと知り、特に同居に問題がないと思っていたのに、本当は嫌だったのか……。

眉をハの字に傾けてそう聞いたら、常務は小さく溜息をついた。


「好き嫌いじゃなく、邪魔だと思う時がある」

「そんな……」

「太郎の奴、俺が日菜子を抱いていると、時々邪魔しに来るだろう。せっかくお前をいい声で鳴かせていたのに、気を逸らされると正直腹が立つ」

「え……」

「オスだから、嫉妬しているのだろうな。
あれさえなければ、太郎のことも可愛いと思えるが……」


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