鬼常務の獲物は私!?
それは多分、嫉妬ではない。
常務が私を虐めていると思って、太郎くんは止めに入るのだと思う。
快楽が頂点に達する時は「もうダメです!」と叫んでしまったり、自分でも驚くような声で喘いでしまうから……。
飼い猫が夫婦喧嘩の仲裁に入る話は、猫業界でよく聞くし、つまり太郎くんは、私と神永常務に「仲良くしてよ」と言ってくれているのだ。
それに関して太郎くんは全く悪くなく、誰が悪いのかといえば、常務の方だろう。
邪魔されたくなければ、ベッドルームでドアを閉めてすればいいのに、リビングでもキッチンでも、廊下でも洗面所でも、スイッチが入ると所構わず私を抱くから……。
口に出すのが恥ずかしいので、心の中だけで太郎くんのフォローをしていた。
常務は腕の中の小雪ちゃんを、優しく撫でている。
最初は震えていた小雪ちゃんも、頭や背中、顎の下をくすぐってもらう内に、この人は恐くないと理解したみたいで、気持ちよさそうな顔になっていた。
「毛が真っ白で綺麗だな……」
そう呟いた常務は、小雪ちゃんの毛並みに顔を埋めて、頰ずりしている。
あ……モフモフしてる……。
やりたくなる気持ちはよく分かるのに、なぜか私の心にチクリとした痛みが走った。