鬼常務の獲物は私!?



言い終えた途端に「ギャーッ!」と皆んなの悲鳴が休憩室に響く。

星乃ちゃんは満足げな顔でニヤリと笑って頷いていて、他の人は驚きと興奮の混ざったような顔をしていた。


私は悲鳴を上げられたことに肩をビクつかせ、その直後に休憩室のドアがバタンと開けられ、男性社員数人が「どうした⁉︎」と飛び込んできた。


「大丈夫です。ゴキブリが出ただけで、既に退治しましたから」


星乃ちゃんの嘘の言い訳に、「なんだ、そうか」と男性社員は戻っていく。

再びドアが閉まると、星乃ちゃんが皆んなに注意した。

「邪魔が入るのでお静かに」

悲鳴を上げてしまった人たちは、口を押さえて首を縦に振る。

そして、注目は再び私に戻された。


「日菜、まずは初彼&脱処女、おめでとう。

それからどうなった?常務とあの部屋で一泊した?それとも夜景が綺麗なバーで飲み直してから、常務の自宅でお泊り?」


「へ?」


初彼&脱処女って……。
星乃ちゃんはかなりの勘違いをしているみたい。

他の人たちもワクワクした目を私に向けているから、同じ思い違いをしているような気がする。


どうしよう……真相を話したら、怒られてしまいそう……。

それでも嘘をつくわけにはいかないので、身を小さくしながらボソボソと言った。


「あの……告白を断ったから、常務は彼氏じゃなく……押し倒されたけど、何もされてないので、処女も……えっと……」


< 27 / 372 >

この作品をシェア

pagetop