鬼常務の獲物は私!?
言い終えた途端に「ギャーッ!」と皆んなの悲鳴が休憩室に響く。
星乃ちゃんは満足げな顔でニヤリと笑って頷いていて、他の人は驚きと興奮の混ざったような顔をしていた。
私は悲鳴を上げられたことに肩をビクつかせ、その直後に休憩室のドアがバタンと開けられ、男性社員数人が「どうした⁉︎」と飛び込んできた。
「大丈夫です。ゴキブリが出ただけで、既に退治しましたから」
星乃ちゃんの嘘の言い訳に、「なんだ、そうか」と男性社員は戻っていく。
再びドアが閉まると、星乃ちゃんが皆んなに注意した。
「邪魔が入るのでお静かに」
悲鳴を上げてしまった人たちは、口を押さえて首を縦に振る。
そして、注目は再び私に戻された。
「日菜、まずは初彼&脱処女、おめでとう。
それからどうなった?常務とあの部屋で一泊した?それとも夜景が綺麗なバーで飲み直してから、常務の自宅でお泊り?」
「へ?」
初彼&脱処女って……。
星乃ちゃんはかなりの勘違いをしているみたい。
他の人たちもワクワクした目を私に向けているから、同じ思い違いをしているような気がする。
どうしよう……真相を話したら、怒られてしまいそう……。
それでも嘘をつくわけにはいかないので、身を小さくしながらボソボソと言った。
「あの……告白を断ったから、常務は彼氏じゃなく……押し倒されたけど、何もされてないので、処女も……えっと……」