鬼常務の獲物は私!?
痛みは一瞬だけで、すぐに消える。
胸に手を当て、今のはなんだったのだろうと考えていたら、モフモフするのをやめた常務が小雪ちゃんにチュッとキスをして、ふんわりと柔らかく微笑むのを見てしまった。
また胸がチクリと痛み、それでやっと気づく。
小雪ちゃんに嫉妬してしまっている自分の心に……。
猫なのはもちろん分かっているけれど、私以外の女の子にキスする常務の姿は見たくない。
彼にいい顔させていることにも、羨ましく思ってしまう。
あれ……。もしかして小雪ちゃんって、私の恋のライバル……?
「日菜子、腹減ったから夕食にしてくれ」
「は、はい……」
小雪ちゃんを抱いたまま、神永常務は私を残してバスルームから出て行ってしまった。
まだ下着にエプロン姿の私は、モソモソと服を着ながら考える。
今私が感じた嫉妬を、もしかしたら常務も味わっていたのかもしれない……。
私が太郎くんにモフモフしたり、可愛がったりする姿に、もっと俺を見てほしいと感じることがあったのかも……。
ということは、太郎くんのことを邪魔だと言わせてしまった原因は、私にあったということで。
これからは可愛がる時と場所を考えよう。
ふたりと2匹で、仲良く暮らしていくために……。