鬼常務の獲物は私!?



翌日。午後の業務をのんびりとこなしていたら、14時すぎにメールがきた。

一緒に暮らしていても、相変わらず呼び出される私。

今日も営業部の皆さんに温かく見送られて、常務室に向かった。

ノックをして中に入ると、神永常務は机に向かって仕事中。

「日菜子、珈琲いれてくれ」と言われたので、珈琲マシーンのスイッチを押して、ブラック珈琲と、自分用のココアもいれた。

トレーに乗せて机の方に向かおうとしたら、ノートパソコンをパタンと閉じた彼に、「そっちで飲む」と、ソファーを指された。

それでローテーブルに、カップをふたつ並べて置く。

机からこっちに来た常務は、体を投げ出すようにドサリとソファーに腰を下ろし、大きく息を吐き出した。

なんだか、疲れているみたい……。

仕事内容について、彼は私に詳しく説明したりしないけれど、その溜息のつき方で、今抱えている仕事が大変なのだろうということは推測できた。

隣に座って、常務を心配する。


「あの、お疲れのようですけど、お体、大丈夫ですか? お昼ご飯はちゃんと食べましたか?」

朝と夜のご飯は私が作っているが、お昼は自分の分だけのお弁当しか用意していない。

神永常務は外勤も多く、お昼は外で食べたり、全く食べない日もあったりで、お弁当はいらないと言われているから。

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