鬼常務の獲物は私!?
外扉の中は半畳分の空きスペースがあり、その先にガラスの内扉がもう一枚。
猫たちが逃げ出さないように、二重扉になっているのだ。
その内扉に手を伸ばして「あれ?」と呟く。
closeの札が掛かっていて、店内が薄暗かった。
定休日は火曜なので今日じゃないし、閉店時間までまだ余裕があるはずなのに……。
おかしいと思いつつも、呼び出されたのだから本間さんは中にいるはず。
そっと内扉を引いてみると、鍵は掛かっておらず、スムーズに開く。
「お邪魔しますー。福原ですー」
声を掛けながら太郎くんと一緒に店内に入る。
広さ20畳ほどの店内はシンと静かで、人も猫もいなかった。
あれ、ここは子猫日和で間違いないよね……。
不安になってキョロキョロと辺りを見回したが、間違いなく子猫日和。
お店の猫たちは、寝床のある別部屋にでも移されているのだろうか?
本間さんと母猫と飼い主さんは、一体どこに……。
店内の照明は消されていて、二方向の窓とドアからの薄明かりしか入ってこない。
そんな薄暗い店内を、本間さんの名前を呼びながら、奥へとゆっくり進んで行った。
ソファーの横を通り、猫用ハンモックや巨大な猫トンネルの脇を抜ける。
するとバッグヤードに繋がる木の引戸が数センチ開いて、その向こうに電灯の明かりが見えた。