鬼常務の獲物は私!?
そう言われてキョロキョロと周囲を見回すと、確かに窓がない。
部屋というより収納庫といった方が適切な4畳ほどの空間で、天井まで伸びる棚に猫用品が詰め込まれていた。
これでは脱出することも、助けを求めることも不可能だ。
どうやら逃げこむ部屋を間違えてしまったみたいで、どうしようと青ざめた。
スマホはさっき奪われ壁に投げつけられたので手もとになく、電話で助けを呼ぶこともできない。
今、私を事務長から守ってくれるのは、どうやら突っ張り棒をしたこの引戸だけのようだった。
しかし、それもガタガタと揺すられては、いつか開いてしまうのではないかと不安になる。
突っ張り棒が爪とぎひとつだけでは心細くて、棚に並べられた猫用品を次々と手に取り、ドアと壁の間に詰め込んでみた。
すると揺れていたドアが一旦静かになり、代わりにまた事務長の声が……。
「開かないな……いいよ、君が素直に出てくるのを少しだけ待ってあげるよ。明日の朝までは誰も来ないし、根くらべも楽しそうだね」
明日の朝まで……。そうか、一晩ここで頑張れば、午前中に店長の本間さんが来てくれる。
幸いキャットフードが置いてあるから、太郎くんのご飯は困らない。水があればもっとよかったが、それは我慢するしかないか……。